2021年12月15日水曜日

就業先から退職を求められて労働審判を申し立てた事例

今回は,具体的な事例を通じて,労働審判手続についてご紹介いたします。

相談者様からご相談を受けた時点では,相談者様は就業先に在籍中でした。

相談者様は,長期間にわたり,勝手にシフトを組み替えられ,机の上に相談者様に対する顧客からのクレーム書面を置かれるなど,度重なる嫌がらせを受けていました。

その様な折,顧客からのクレームが絶えないとして,就業先から退職を求められ,退職しない場合には当該クレームを理由に解雇すると告げられたのが本件事案です。

相談者様は,度重なる嫌がらせや退職勧奨,解雇通知が不当なものであると考え,就業先を退職するつもりもなかったことから,この段階で弁護士から助言を受け,証拠収集を行いました。

早期にご相談いただいたため,

・自主退職については頑なに断ること

・就業先の就業規則の写しを取得すること

・解雇するつもりならば,解雇理由が明記された書面を就業先に求めること

・上司から退職を執拗に求められている場面を録音等するなどして証拠保全を行うこと

・嫌がらせを受けている場面を写真に撮るなどして,証拠集めをおこなうこと

 を助言することができました。

 このため,相談者様は十分な証拠をもって①解雇が無効であることの確認②解雇が無効であることを前提に未払い賃金の支払請求,及び,③度重なる嫌がらせがパワハラに該当するとして,精神的苦痛を被ったことによる慰謝料請求を,労働審判において就業先に請求することができました。

 【労働審判とは】

ここで,労働審判の手続を説明したいと思います。

労働審判手続は,当事者双方(本件でいえば会社代表者と労働者)に裁判所に出廷してもらい,話合いをするという手続きです。

労働審判の手続が訴訟と異なる点は,原則として3回までしか審理が行われないこと,当事者双方が同じ部屋に集い,労働審判官(裁判官)と労働審判員(下記注を参照)に話を聞いてもらうところです。

当事者の話を審判官に対して直接話して説明を行うことにより,当事者の様子を審判官が見ながら審理を進めていきます。

もちろん,労働審判においても通常の訴訟と同様,証拠の作成,提出が必要ですが,手続の開始時点から当事者の話を審判官等に詳しく聞いてもらえる点が通常の訴訟と異なる点といえます。

通常訴訟では,基本的には書面のみで主張を行い,実際に当事者の話を直接裁判官が聞くのは証人尋問に限られます。

注)労働審判員は,労働関係に関する専門的な知識経験を有する者の中から,あらかじめ最高裁判所によって任命された方々をいいます。労働審判員は労働者,使用者の双方の立場に精通している人間が選任されます。

本件の労働審判期日では,審判官から当事者双方に対し,主に解雇の有効性について話が聞かれました。

また,パワハラに基づく慰謝料請求も行っていたため,パワハラが行われたとされる状況について,当事者(労働者,上司)から詳細に聴取されました。

今回の事例では,残念ながらパワハラの認定まではされなかったものの,労働審判官が解雇自体は無効と考えたため,相談者様に有利な条件で和解案が提示され,多少の譲歩はあったものの,会社側が相当程度の解決金を労働者に支払うことにより,無事,和解が成立しました。

この事例では,相談者様が就業先を退職される前に相談してくださったため,解雇理由通知書,嫌がらせに関連する写真,上司との会話の録音など,様々な証拠収集を行うことができました。

裁判所を通じて紛争解決を目指す場合,第三者から見て解雇する理由があるか,パワハラ行為を行っているかどうかを判断するために,客観的証拠が必要になります。

弊所に相談していただければ,有効な証拠や,その取得方法についてアドバイスが可能です。

会社からの不当な退職勧奨や,解雇をほのめかされている場合には,弊所までご相談ください。

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