2022年10月11日火曜日

高齢者の財産管理

 高齢者の方(あるいはそのご家族)から、体力の低下により金融機関でお金を引き出してくることが難しい、将来判断能力が衰えてきたときの財産管理をどうしたらよいのか分からないといったご相談をいただくことが増えております。

中には、細かい取決めをしないまま、ご自身の財産管理を家族に依頼し(又はご家族から依頼され)ているというケースも少なくありません。

しかし、そのままにしておくとご自身の判断能力が衰えたときや将来相続が発生したときに親族間で金銭管理を巡ったトラブルへと発展する可能性があります。こうしたトラブルを未然に防ぐために、あらかじめ財産管理に関する対策を採っておくことが望ましいです。

弊所では、各弁護士が豊富な経験に基づいて、どの財産管理の方法がふさわしいかアドバイスをさせていただいております。

また、財産管理に付随する税務関係や不動産登記の問題についても、税理士登録をしている弁護士やグループ司法書士法人と協力してワンストップサービスを提供しておりますので、併せてご依頼いただけます。

 ご自身、又は、ご家族の方の財産管理についてお悩みやご不安がある方は、ぜひ弊所までご相談ください。

ご自身の財産をご家族などに管理してもらう方法として、大きく分けて①財産管理等委任契約、②任意後見契約、③成年後見、④家族信託の4つの方法があります。以下、これら4つの方法についてご紹介します。

①財産管理等委任契約

 財産管理等委任契約は、ご自身の判断能力はしっかりしているものの、足腰が悪かったり体力が低下していたりといった理由で金融機関での入出金、振込手続等が難しい場合に、ご家族などに代わりに手続きを行ってもらうための契約です。

 財産管理等委任契約の内容としては、財産の内容・管理方法について記載するほか、ライフプランに対する要望、死後の事務処理に関する委任事項を記載することもできます。

この契約は、将来、ご自身の判断能力が不十分となった時には効力を失ってしまいますが、②の任意後見契約を締結していれば引き続き財産管理をしてもらうことができます。実務上も、財産管理等委任契約書と任意後見契約書を一緒に作成することが多いです。加えて遺言書もあわせて作成するケースもあります。

 注意点として、金融機関によっては財産管理等委任契約のみでは引き出しなどに応じないところもあります。その場合、別途、金融機関に対する代理人選任届等の提出やご自身の意思確認が必要になります。

②任意後見契約

 任意後見制度は、認知症などで判断能力が低下した場合に備えて、信頼できる人に将来自分の後見人になってもらい、財産管理等を行ってもらうことをあらかじめ契約で定めておく制度です。

 ご自身の判断能力が不十分となってから効力が生じるので、それまでの間の財産管理を依頼するために財産管理等委任契約書と一緒に作成しておくのが一般的です。また、任意後見契約は家庭裁判所によって任意後見監督人という監督機関が選任されることによって効力が生じます。

 なお、任意後見契約は法務局で登記されますので、登記事項証明書を取得することで任意後見人であることを証明して、金融機関との取引などの活動ができます。

③成年後見

 成年後見制度は、判断能力が不十分な状態となった場合に、家庭裁判所が成年後見人を選任することで、法律面や生活面でのサポートをする制度です。なお、判断能力の程度に応じて後見以外にも「保佐」、「補助」といった制度もあります。

 成年後見制度では、裁判所の選任する成年後見人が中立な立場で財産管理を行います。また、裁判所も成年後見人による財産管理業務を監督します。例えば、居住用の不動産などの財産を処分するには裁判所の許可が必要です。

成年後見人の選任に関しては、親族を候補者として申立てをすることもできますが、財産が多い場合や同意していない親族がいる場合には、弁護士、司法書士といった専門家が後見人や後見監督人として選任されるのが通常です。

 このように、成年後見では、後見人をご自身では決められないため、ご不安がある方は、あらかじめ任意後見契約等を締結しておくことをおすすめします。

④家族信託

 最後に、上記3つの手段に代わるものとして、近年、利用が増加している家族信託をご紹介します。

 家族信託は、ご自身の判断能力が健在なうちに自分の財産を信頼できる人に、信託財産という形で託し、その管理や処分を任せる財産管理方法です。

上記3つの手段と違い、財産の所有権・名義自体をご自身から受託者に移転させる点に特徴があります(もちろん、受託者は法律や信託目的に基づいて財産を管理処分する義務を負いますので自由に使えるわけではありません)。

 家族信託では、信託する財産、信託者、受託者、及び、信託財産から発生した利益を享受する受益者を決めます。受益者は孫などを選ぶこともでき、設定次第で遺言に代わる機能を果たすこともできます。このように、家族信託は自由に内容を決められるという点で、上記3つの手段にはないメリットがあります。

 なお、家族信託では、信託財産に関する所得税、贈与税などの税務関係についても注意が必要となります。家族信託をご検討の場合には、併せて税務関係もご相談されることをおすすめします。

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